NEW! 発電機試験と抵抗について~理科・物理屋のひとりごと~
こんにちは。今月のブログはK’zが担当いたします。1年ぶりの執筆となります。
〇イントロ ~フルマラソン42.195kmへの挑戦~
私事ですが、アラフィフにして今年2月、人生初のフルマラソンに挑戦しました。グロスタイム(号砲が鳴ってからの計測)は5時間半でしたが、ネットタイム(スタートラインを通過してからの計測)では5時間17分で、北九州マラソン42.195kmを無事走り切りました。
初出場だったため最後尾ブロックからのスタートで、号砲鳴ってからスタート通過まで歩く…これがグロスとネットのタイム差の理由です。


マイナス10kgの減量を目指した挑戦でもありました(健康診断の結果はマイナス9kgのBMI: 21)。
5時間切りを目指していたのですが、前日に小倉の友人宅に泊めてもらい夜遅くまで飲み明かし、二日酔いのまま万全でないコンディションで走ることに…。
フルマラソンに挑戦しようと思ったきっかけは、東京在住時代にさかのぼります。当時、東京マラソン出場を目標にダイエットも兼ねて2年近く練習していたのですが、結局出場には至らず福岡にUターンし、未練が残ったままでした。思えば、当時放送されていたTVドラマ「陸王(2017年)」の影響も大きかったように思います。それから10年近く経って、ようやくフルマラソン初出場が実現しました。

ちなみに、うっかり地元の福岡マラソンのエントリーを忘れてしまい(エントリーしたつもり)、人生初のマラソンは隣の北九州マラソンに。
42kmの道のりは本当に大変でしたが、大勢の沿道からの歓声やエイドステーションなど、とても楽しい体験ができました。人生であれほど多くの人に応援してもらう経験はそうそうありません。主役になった気分を味わえます。
ファンランではデンソー所属の池内彩乃選手がランナーと一緒に走りながら声を掛けてくださり、とても励まされました。トップアスリートの走りを間近で見ることができたことも、非常に印象深い思い出です。ただ…エイドステーションの名物、小倉牛が品切れ(先着順)で食べれなかったのが非常に残念です。いつかリベンジしたいと・・・
がむしゃらに走り切った結果、数日後には足の爪が5枚剥がれ落ちました。それほどまでに過酷なレースでした。
昔は長距離走が大の苦手で、まさか今更マラソンに挑戦するとは。さらに数学やITなどの情報系も苦手で嫌いだった自分が、今では専門にしているとは。当時は想像もしていませんでした。C言語やFortranにも苦戦し、友人のプログラムを丸写しして課題を提出していたほどです。。。
言い訳がましいですが…専攻は素粒子物理・原子核物理学だったので、紙と鉛筆で数式を考えるほうが性に合っていました。
〇本題:発電機(IRG)の特性試験
さて本題です。今回は私が担当している「(ブラシレス)発電機(IRG:Inner Rotor Generatorの略)」について、専攻していた物理(電磁気学って程でもないですが)も絡めながら紹介します。
過去の発電機のブログは以下になります。
一般にモータは電源をつなぐとローター軸が回転し、逆に外部から力を加えてローター軸を回すと電気が発生し発電機になります。実際、弊社の 発電機(IRG) は、ブラシレス IPM モータと基本的に近い構造を持つ永久磁石式の発電機です。つまりIPMモータ自体も発電機として使用することが可能なのです。

私は発電機の特性試験を担当しており、今回はその内容をご紹介します。
〇発電機(IRG)の特性試験
発電機の特性は、ローター軸を外部から回転させた時の「誘起電圧」を測定することになります。
発電機では、永久磁石を内蔵したロータを外部から回転させることで、ステータ巻線を通過する磁束が時間的に変化します。この磁束の変化によって、U・V・W の三相巻線に誘導起電力が発生します。この現象は、ファラデーの電磁誘導の法則で説明できます。と言っても電圧計で電圧値を測定するだけなので式は意識しませんが。

E:誘導起電力(V)
N:コイルの巻数
Φ:1巻きあたりを貫く磁束(Wb:ウェーバ)
dΦ/dt:磁束の時間変化率(Wb/s)
ファラデーの法則から、コイルを通過する磁束が速く変化するほど誘起電圧が大きくなることが分
かります。同じ発電機で巻線仕様や永久磁石の磁束が一定であれば、一般に回転数を高くすると誘起電圧も高くなります。 概念的には下記の関係で表せます。

N:コイルの巻数
Φ:磁束
ω:角速度
発電機の特性はモータと同様、コイルの巻き線仕様や永久磁石とその極数によって決まります。コイルの巻数を増やすと、一般に誘起電圧は高くなります。一方、線径や並列数は巻線抵抗や許容電流に影響します。
また永久磁石の磁束は誘起電圧に、極数と回転数は発電周波数に影響します。これらを用途に応じて組み合わせ、必要な電圧・電流・出力特性となるよう設計します。
発電機試験ではまず無負荷状態で回転数を変化させ、回転数と誘起電圧の関係を確認します。発電機の無負荷とは、出力端子(U・V・Wの三相3線)に何もつながない(電流が流れない端子開放状態)で電圧を測定することを指し、このときの発電電圧(誘起電圧)が最も高い状態です。この状態で回転数を変化させ誘起電圧との関係を調べます。
弊社での発電機の特性試験では、U・V・Wからの三相交流(AC)を三相ブリッジダイオードで整流し、正極(+)・負極(-)の 2端子(2線)の直流(DC)として使用します。
実際の用途では交流ではなく直流として利用することが多い様です。そのため、評価試験も整流後の直流側へ負荷抵抗を接続して試験を行います。
ただし三相交流をブリッジ整流すると、交流側の線間電圧実効値と、整流後の直流電圧平均値は同じにはなりません。理想的な三相全波整流では、次の関係になります。

VDC:整流後の直流電圧(平均値)[V]
VAC:三相交流の 線間電圧(実効値)[V]
直流で考える方がシンプルでかつ簡単で済みますが、交流から直流に変換する際に、ダイオードの順方向電圧降下、発電波形、負荷条件などの影響を受けるため、理論値と完全に一致するわけではありません。
整流後のプラス・マイナスの直流を抵抗につなぐことが発電機にとっての「負荷」になります。この抵抗値を変えることで流れる電流や出力が変化するので、抵抗値を変えながら発電特性を調べます。
弊社では、発電機の特性試験に主にホーロー抵抗器を使用しています。ホーロー抵抗器は巻線抵抗器の一種で、抵抗線を耐熱性のあるホーロー質の被膜で保護した構造です。耐熱性に優れ、製品仕様の範囲内では短時間の過負荷にも比較的強いため、大電力を消費する負荷抵抗として使用できます。複数の抵抗器を直列・並列に組み合わせることで、数kW程度の発電機試験にも対応できます。専用の負荷試験装置と比較すると、比較的安価で、試験条件に合わせて回路を構成できることもメリットです。
ただし、専用負荷装置や電子負荷に比べると、負荷値を変更するためには抵抗器の直列・並列接続を変更する必要があり、細かな負荷調整には手間がかかります。
弊社の試験でも、この「必要な抵抗値をどう作るか」が一つの課題になります。




実際に試験を行いながらデータを取得し、電圧・電流・出力などをグラフ化して評価します。モータと同様に発電機の特性(性能)を把握できます。またコイルの温度が上昇すると銅損の増加(銅線抵抗の増加)により効率が低下するため、温度飽和時のデータ取得が重要になります。(※ 飽和…温度が上がりっ切って一定の値をキープした状態)

例えば弊社のIRG-182Lの特性グラフは下図にようになります。

発電機試験の流れは以下の3ステップです。
1.無負荷で回転数を変えての誘起電圧を測定する。
2.抵抗(負荷)を変更しながら特性試験を行う。
3.特性試験の結果から温度上昇試験を実施する。
これらの試験を通じて、お客様の要望通りの発電機ができているかを確認します。試作段階では毎回この特性試験を行います。
特性に大きく影響するのは、コイルの巻き線仕様や永久磁石の極数です。明和製作所では、お客様の用途やご要望に合わせて、最適な仕様へカスタマイズした発電機をご提案しています。
〇特性試験で頭を悩ませる「抵抗値の選定」
さて、試験時に毎回頭を悩ませるのが、特性試験の「抵抗値の選定」です。
今回、弊社の発電機 IRG-182L では、評価したい負荷領域から約 0.6Ω を一つの重要な試験点として設定しました。そこで社内にある 1Ω、10Ω、22Ω の抵抗器を組み合わせて、約 0.6Ω の負荷抵抗を作ることにしました。
この試験を行うたびに、(40年以上前ですが)地元福岡の私大を受験した際の入試問題を思い出します。
「1Ωの抵抗を好きなだけ使い、直列・並列を組み合わせて〇〇Ωの合成抵抗を作成せよ」
という問題でした。確か〇〇の合成抵抗値は1.3333Ωだったような……。
こうした数値問題(数学、小数計算)が当時は大の苦手で、全く解けなかったのを覚えています。分かる人にとっては瞬殺の問題なのでしょうが。
そしてこの入試問題と、まさに同じ状況に業務で直面することになりますが・・・この「抵抗器の作成」については、また今度のブログで書こうと思います。(長くなりましたので)
問題だけ書いておきます。
「私が行った発電機試験 ~抵抗作成~」
・1Ωの抵抗 10本
・10Ωの抵抗 5本
・22Ωの抵抗 5本
問題です
1Ωの抵抗10本、10Ωの抵抗5本、22Ωの抵抗5本から抜き出して約0.6Ωの合成抵抗を作成してください。ただし、抵抗1本当たりにかかる電力が一番低くなるように抵抗を組んでください。
発電機の整流後の出力は4kWで、1Ωの抵抗1本の電力は300W未満に、10Ω、22Ωの抵抗1本の電力は750W未満にせよ。(さすがにここまでくると中学レベルを超えてますが…)
大学入試ではさらに設問が続いてコイルやコンデンサーが絡んで、もっと大変なことになりますが……。
まだまだモータや発電機についてご紹介したい内容はありますが、長くなりましたので今回はここまでとします。

最後に…
勉強も仕事(開発)も長距離マラソンと同じく持久力・忍耐力勝負! もちろん42Km走るためには計画立てて、こつこつと目標に向けて努力(練習)を重ねて達成しました。
未来の技術者、就活中の方、受験生の皆さん、「夏の天王山」を乗り越えて、目標や夢に向かって頑張ってください! 私も会社の製造現場の若手と、今年の11月の福岡マラソンを完走目指し頑張ります!(残り80日切った…汗)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


