株式会社 明和製作所

BLOG技術者ブログ

整流子モータ試験装置の刷新と品質・生産性向上

2025.09.18

皆さんこんにちは。今回は2021年10月投稿以来、約4年ぶりに品質保証課のwasaがお送りします。
当時から4年も経過すると当然ですが年を取るもので、ついに今年から愛娘が小学1年生になりました。娘のどんどんませていく姿を見ていると、父親離れはもう目の前なのかなと思い成長はうれしいですが、寂しさを感じているところです。

さて、前回私が執筆したブログ(当社の品質への取組みについて)では、弊社の品質への取り組みとして、ISOや3H、品質リスクアセスメントの話題に触れました。これは現在でも弊社の品質管理の基本方針として取り組みを継続しています。

今回は品質保証課の私が主担当で推進しております「整流子モータ試験装置の刷新と品質生産性向上」について紹介したいと思います。

今回の取り組みのきっかけは『中小企業省力化投資補助金[一般型] 』の公募です。

『中小企業等の売上拡大や生産性向上を後押しするため、人手不足に悩む中小企業等が、IoT・ロボット等の人手不足解消に効果があるデジタル技術等を活用した設備を導入するための事業費等の経費の一部を補助することにより、省力化投資を促進します。これにより、中小企業等の付加価値額や生産性向上を図り、賃上げにつなげることを目的とします。』というものですが、弊社社長の主導で第2回に応募申請し、お陰様で8月のお盆休み前後に採択通知をいただきました。

弊社の整流子モータの出荷前試験装置は30年選手で、設備老朽化やIT-PC環境の変化に伴い、やらなければならない取り組みでしたが、補助金制度を活用してタイムリーに、より積極的な投資計画を実施することができます。まずは今回採択された省力化投資計画の内容について簡単にご紹介します。

(今回の補助金の政府の主眼は確実な賃上げの実施ですが、それは社内外へのコミットメントとして社長が必ず行ってくれるはずですので、その話は今後のお楽しみとしてしまして。。((^▽^)/))

事業計画名:「整流子モータ完成品慣らし運転・検査工程の品質・生産性向上計画」
100字概要:「弊社売上の半分を占める整流子モータの生産においてボトルネックとなっている最終組立試験工程に、最適化した自動エージング装置と自動試験機を導入する事で品質管理能力の向上と従来比約60%の省力化を実現する。」

広告や新聞記事・技術者ブログなどでの弊社からの情報発信は、新規分野として伸張して様々な新規技術開発要素があるIPMモータ(ブラシレスモータ)がらみが多いのですが、整流子モータの生産規模は過去数十年の長期レンジで見ると規模が縮小しているものの近年は逆に安定して漸増傾向にあります。これは日本では大手が撤退して、製造できるメーカーが減少しているためだと思われます。

<出荷検査の紹介>
私が所属している品質保証課は、お客様に対してすべての品質の最終責任を負っており、モータ製品の最終製造工程である組立完成品の「出荷検査」については、品質保証課所属の検査員が現場に常駐して、以下の流れで検査・試験を実施しています。

この試験の流れを見ると、「無負荷特性試験」の前に聞きなれない「モータエージング」という項目があります。

「モータエージング」とは整流子モータの摺動部である「カーボンブラシ」と「整流子(コンミテータ)」を「慣らす」若しくは「馴染ませる」という意味です。
(カーボンブラシと整流子(コンミテータ)」については電気モータの整流子とブラシの関係をご参照ください。)

通常、インダクション(誘導)モータやPMモータ、SRモータのようなブラシレスモータは上記の「モータエージング」をする必要はなく、そのまま無負荷特性試験を実施することができます。
但し、当社が製造する「整流子モータ」および「DCマグネットモータ」はブラシを使用するモータの代表格であり、無負荷特性試験前に「モータエージング」という動作をさせる必要があります。

<なぜ整流子モータはエージングさせる必要があるのか>
整流子モータは「整流子」と「カーボンブラシ」を接触(摺動)させ、スイッチングすることで、電機子の通電スロットが切り替わり回転する仕組みです。
ブラシレスモータで言うところの、「回転センサ」や「エンコーダ/レゾルバ」で行っていることを機械的に行っているイメージです。

整流子モータでエージングをする主な理由は以下の通りです。
①整流子とカーボンブラシ摺動部の接触径を合わせるため。
②整流子表面に適度な「整流子皮膜」を形成させるため。
摺動部を上記状態にすることで、メカロスが減り、潤滑性が増し、摺動摩擦が一定となるため、回転数、電流値に安定をもたらします。
弊社はエージングにて安定した数値を出荷検査にて測定し、合否判定を実施しています。
整流子モータにとって、エージングは出荷検査するための重要な工程となります。

一方で、ブラシレスモータは回転機構部にカーボンブラシのような機械的負荷がないことから、エージングは不要で最初から安定した試験が可能です。

以上のことから、整流子モータはお客様へ納品した時点でモータ性能を出す必要があるため、エージングという動作が必要になります。

<整流子モータの特徴>
整流子モータは別名ユニバーサルモータと呼ばれており、交直流電圧両用のモータであり、使い方に関して、片方回転のみ、両回転仕様、交流のみで使用、交直流両電圧で使用 等々、運転パターンはお客様によってさまざまで、弊社はお客様のご要求仕様に応じて専用の整流子モータを生産しております。
その様々な仕様によって、試験内容は集約すると現在大まか11パターンが存在し、現状ではすべて検査員が手動で測定を行っている状況となります。

<現行の試験装置の紹介>
①モータエージング装置
当該設備は先にご紹介した「モータエージング」を行う設備となります。
モータの無負荷特性試験を実施する前のエージングを行う設備で、MAX20台投入できます。
当該設備は導入から30年強経っており、弊社の中でも老朽化設備の1つとなっています。
まだ現役バリバリで動いてもらっています。

②モータ出荷試験設備
次に当該設備は先に紹介した「モータ出荷試験」を行う設備となります。
出荷試験はJEC-2000番台に準拠した社内規格となり、社内規格に則った試験内容となります。
先程も述べた通り、この試験はすべて手動操作にて実施中となります。
使用している機器も今ではかなり珍しいアナログ針の電流電圧計があったりします(笑)
あっ!古いと言ってもきちんと校正していますので、ご安心ください。

<出荷検査における今回の取組みについて>
とりあえず、古さをアピールしたところで、ようやく今回の本題に入っていきたいと思います。

先に挙げた「モータエージング装置」及び「モータ出荷試験設備」に関しては、約30年の歳月を経て、まだ現役で稼働しておりますが、今後を見据えて新型の自動デジタル試験機への刷新を以前から計画していました。但し、完全なオーダーメイドで数千万円の投資規模となるため、そう簡単には実施できません。

そこで、前述の『中小企業省力化投資補助金[一般型] 』の公募情報があり、一気に計画が加速しました。補助金の常として交付決定まで正式発注はできませんので、導入設備の要求仕様と簡易検討イメージを数社の設備メーカーに投げかけ、提案・見積を取得しました。(9/5に交付申請まで完了し、現在交付決定通知待ちです。)決定通知後に発注となります。

整流子モータ試験システム内容
<自動完成モータ用エージング※装置>
A)小型モータ用
 当社で製造する外径φ200㎜未満・長さ350㎜未満、且つ特殊形状(突起物等)でない整流子モータに適用
B)大型モータ用
当社で製造する外径φ200㎜以上・長さ350㎜以上、且つ特殊形状(突起物等)である整流子モータに適用

<自動完成モータ試験機>
A) 個別試験装置
 エージング装置で整流子とカーボンブラシを馴染ませた後、弊社で定める出荷試験を実施する装置。
 試験及び試験データ取得、試験表作成はほぼ自動化される。
B) 負荷試験装置
 従来技術部門でしかできなかった負荷試験を当該試験システムに付与。品質向上を狙いとしている。

実際の試験装置設置想定図

省力化内容

新型の自動デジタル試験機は数十年来のアナログ試験機に比べ大幅に省力化が可能となり、従来モータ生産のスループットを拡大するだけでなく、非常にコンパクトで従来比1/3のスペースにおさまり、空きスペースに生産量の拡大するIPMモータの生産ラインを増設する事が可能となります。

● 試験装置の電源を交流大型変圧器から導入予定のサイリスタ方式交流電力調整器に変更、また同箱内に直流電源装置も設置し、交流・直流の両電圧で試験できるようになり、移動時間や段取り工数の削減による生産性向上につながる。

● 小型モータ慣らし試験装置のエージング時間を現行20分から10分に短縮できるため、タクトタイムをキープした状態で平行運転数量を減らすことができ、装置自体を小型化し省スペース化になる。また約20%のピーク電力の削減による省エネ化が図れる。

● 試験の自動化、試験場所の集約と省スペース化ができ、検査員の省人化ができる。余剰検査員は拡張中の「IPMモータ」の生産・検査員に充当することが可能となり、生産量と付加価値向上が期待できる。

今回の設備導入でエージングと特性試験についてはかなりの自動化と合理化が図れる事になりますが、外観検査については画像診断装置等の導入はなく、引き続き人の目と注意力による対応を継続する事になります。予算と時間の制約もあり、現状では弊社のような小ロットで仕様がそれぞれ異なるモータに対応するソリューションを見つけることができませんでした。しかしこれもAI技術の進歩とコストダウンにより、そのうち弊社でも導入できるようになる事が期待されますので、ぜひ次の機会には取り組んでみたいと思います。

今回の設備導入については、製造部長・生産技術課長のサポートの元、設備の仕様検討から試験装置製作会社との打ち合わせまで通常の品証業務をこなしながら主担当として推進しており、2025年度中の導入完了に向けて今後ますます忙しくなる予感ですが、いい経験をさせてもらっています。💦

設備の重要性・投資金額を考えると失敗は許されず身が引き締まる思いですが、製造現場スタッフの協力も仰ぎながら、リスクアセスメントと入念な確認を実施し、ぜひ成功体験として完遂させて最後はうまい酒を飲もうと思います。(下記イラストはbyChatGPTです!) 今回のブログは以上です。

最後に、整流子モータはいわゆる「枯れた技術」にはなりますが、それがゆえに頑丈で信頼できるとともに、アナログ的なノウハウの塊の製品です。冒頭に書きましたように、大手が撤退して製造できるメーカーが減少しておりコード付き電動工具の生産移管(弊社ブログ コード式電動工具の駆動ユニット代替について ご参照ください)や、配電機器関連の製品立ち上げ(電力向け配電機器用モータについて )により安定して漸増傾向にあります。

弊社は今回の試験装置だけでなく、金型や治工具など、整流子モータの生産継続に必要な設備投資や人材教育を継続してまいりますので、ぜひ安心して生産移管や新製品立ち上げ等ご依頼ください。

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