株式会社 明和製作所

BLOG技術者ブログ

日中政治摩擦と高効率モータ製造リスク

2026.01.15

明けましておめでとうございます。今回のブログは通常の技術テーマを予定していたのですが、年明けからの急展開で急遽執筆する事になったT.Sです。

昨年1月に就任したトランプ2.0の自国優先主義に世界はかき回され続けていますが、関税合戦も成り行きが見えてきて、年始は重大な災害もなく穏やかなお正月かと思いきや、1月3日の米国ベネズエラ攻撃と大統領夫妻の拘束・連行には驚かされました。(下記はNHKスペシャルより引用)

その後のトランプの「ドンロー主義宣言」に勢いを得たかのように、今度は1月7日の朝「中国商務省が、台湾有事をめぐる高市早苗首相の国会答弁を理由として、日本向けの軍民両用(デュアルユース)製品の輸出規制を強化する」というニュースが日本中を駆け巡り、弊社にも複数のテレビ局から取材の依頼がありました。

昨年の夏に取材を受けたテレビ東京WBSには夕方の隙間時間にリモート取材対応しましたが、他はお断りしました。株価への影響の懸念からか大手で取材に応じるところはないようで、テレビ朝日報道ステーションでは、やはり中小企業の磁石メーカーが取材に応じていました。日本製造メーカーであっても磁石材料の調達は中国からで、もろに影響を受けているようです。

まだ具体的な品目もわからない段階でマスコミは騒ぎすぎではないかと思いましたが、「日本の企業が困っている」というビジュアルがとにかく撮りたいという感じで、30分ほど取材対応した内容から、当日夜のニュースで「想定される最悪の事態としては」の社長コメントだけが紹介されていました。

昨年夏の「米中摩擦のとばっちり」とは違い、今回は「日本の軍民デュアルユースを狙い撃ち」ですので、より深刻な事態であるのは確かです。
今週1月11日になって既に一部の中国企業が日本企業に対し、レアアース取り引きを一時停止し、新しい契約を結ばない方針を伝えたという報道もありました。しかし中国の常として地方や組織ごとに習近平の顔色を見ながらバラバラに動いている感があります。

実際 中国商務省の報道官がその後の記者会見で、軍民両用品目でも「民生用途の条件を満たす日本からの輸出申請は全て承認される」「申請や審査などの手続きは法令に準拠している」と語っています。
弊社としては最善の結果を願いつつも、調達面での最悪の事態を想定して、技術開発面での対応を進めています。

技術者ブログで政治ネタに文字数を割きたくはないのですが、昨年7月の「米中貿易摩擦と高効率モータ製造リスク」に続き、その後のupdateご報告含め、今回の事態の解説と今後の見通しを書かせていただきます。
また少しは技術者ブログらしく、Dy含有有無での磁石の特性の違い、Dyフリーモータ、完全レアアース・永久磁石フリーモータの性能比較などについても最後に紹介させていただこうと思います。

[昨年夏以後のUpdate]

上記ブログを出し、8月のWBS番組で弊社紹介があった直後に中国商務部での審査が完了したとの知らせがあり、9月には無事に半年使用分を見越した量の磁石が入荷しました。
その後10月にはまた米中間でレアアース規制をめぐる攻防がありましたが、習近平トランプ会談後は微妙な拮抗状態が続いています。

その間日本向けの規制について特に動きはなく、弊社では昨年10月にはBCP在庫として来期1年分を想定した発注をかけています。しかしこれも7月のブログでご紹介した通り、地方から中央の中国商務部の審査を経て承認されてはじめて輸出されることになります。その進捗状況は随時確認中です。

そして皆さんご存じのように、2025年11月7日の衆議院予算委員会において高市新総理による「台湾有事発言」があり、それに対して中国が過敏に反応。日本政府は「従来通り」「遺憾」と繰り返すのみで、中国の様々な対抗措置がどんどんエスカレートし、ついにレアアースという伝家の宝刀を日本に向けても再度突き付けてくる事態に至りました。2012年の尖閣諸島国有化による紛争時以来となりますが、台湾周辺の海域はその時以来継続した火種であり続けています。日本人は喉元過ぎれば忘れてしまいますが、中国・習近平は継続一貫して日本への対抗方針を維持してきています。


高市さんは従来からの主張を披露したかったのでしょうが、総理の国会答弁としては明らかに失言。前々から警戒マークしていた中国の思うツボ、今さら完全撤回はできないと思いますが、逆に「日本による武力介入、軍国主義の復活。。。」という中国の飛躍した言い分は明確に否定して、習近平に対してきちんと平和外交の申し入れをして欲しいと思います。

メディアやネットでは「日本のメーカーは中国に頼るな、レアアースは南鳥島で採取できる」などという現実離れした乱暴な論調も見られますが、調達先としても市場としても現段階で「脱中国」はナンセンス。将来に向けた展望と目の前の現実は分けて考える必要があります。日本発の技術が多い永久磁石ですが、残念ながら生産面では中国メーカーのシェアが8割以上になっていますし、EVやAIロボット等での中国の近年のハイテク技術の進化は率直に評価すべきです。

しかし中国は付き合い方が難しい隣人であるのも確かです。現在の中国は100年程度の歴史しかなく、独裁政権である共産党員は13億の10%しかいない。それでも1.3億人。日本の人口を超えています。
共産党政権が基盤を安泰にするためには、日本はかつて台湾と中国の一部を植民地にし今もその危険がある国で、そこから守るのが共産党だ、という自らの存在証明を常にし続ける必要がある。「他を攻撃するのは自らの不安の発露」ですね。日本渡航制限も「日本は意外に良い国だったという体験を持つ国民が増えすぎるのは困る」という思惑も大いにあるのでは。「中華民族の偉大な復興」を目指す習近平が台湾の所有を絶対に譲れないのは、国民党との抗争の経緯以外に、台北の故宮博物院にある王朝の財宝は正当な継承者が所有すべきものだ、というのも結構大きな理由だと思います。(この部分はブログ執筆者の個人的見解で、弊社の主張ではありません。念の為。)

それにしてもアメリカ・ロシアが、資源の利権や覇権をかけて、周辺国を武力攻撃で屈服させる2026年の世界は、皇帝や独裁者が支配する帝国主義の時代に舞い戻ってしまったかのようです。
中国は米国に対して「国際法を順守し、他国の主権と安全の侵害をやめるよう強く求める」と批判していますが、台湾は自国内なのだから武力を使おうが批判される筋合いはないという言い分なのでしょう。

しかし日本が「一つの中国」政策を支持しているというのは、あくまで平和的解決により台湾が最終的に帰属する場合という条件付きです。

日本の首相は中国に対してもアメリカに対してもロシアに対してもイスラエルに対しても、平和主義のリーダーとして毅然とした対応をして欲しいですね!(しかしこのタイミングで選挙戦術優先ですか。。)

[明和製作所 レアアースフリー対応]

さて政治・歴史談義はこれくらいにして、弊社のモータ戦略の流れをご紹介しておきます。
弊社はもともと永久磁石を一切使わない「整流子モータ」専業でしたが、用途を広げ新しい需要に対応していくために、「DCマグネットモータ」、そしてブラシレスモータの開発製造を手掛けてきました。
その際当初は「レアアースフリー」にこだわり、「SRモータ」を中心とした開発と事業展開を計画しましたが、SRモータは用途が限られ、一般的な普及が進みませんでした。

そこで日本の磁石メーカーが中国メーカーに技術供与し、合弁工場含めネオジム磁石が安価に安定供給されるようになったタイミングで、高性能なネオジム磁石を使った「IPMモータ」への注力を始めました。このあたりの事情は2020.12.03ブログ「開発動向」をご参照ください。

その後また再びレアアースの価格が上昇し、特にディスプロジウムの価格高騰が問題になってきた2021年からDyレス磁石を使った高効率モータ開発の取組も開始しました。

レアアースフリーモータ開発、重希土類フリーモータ開発(2025.07.22ブログ「米中貿易摩擦とIPMモータ製造リスク」)

[レアアース磁石モータ、非レアアース磁石モータ、非磁石モータ比較]


それぞれのモータで実際どれくらい性能が違うのか、皆さん興味あるところだと思いますが、ちょうど昨年10月にAstemo社さんから2030年頃の実用化をめざしたEV向けのレアアースフリー新型モータの発表がありました。
参考までプレスリリースの公開資料から引用掲載させていただきます。

レアアースフリー磁石、磁石不使用でどこまでレアアース使用モータに迫れるかという最先端の開発事例ですが、逆にネオジム磁石の効力が非常にわかりやすく示されています。
弊社が量産している「SRモータ」(レアアースフリーDCBL)も同様に、IPMと比較すると効率特性は不利ですが、永久磁石を使いませんので磁石調達の問題や後述の耐熱特性の問題は完全に回避する事ができます。

[Dy入りネオジム磁石、Dy無しネオジム磁石比較]

弊社では昨年から輸出管理規制の対象外であるDyフリー・ネオジム磁石の評価を進めています。
ひと言でネオジム磁石と言っても各社から様々なグレードの製品があります。
残留磁気密度、保磁力、最大エネルギー積、温度係数など様々な磁気特性を見極めて、その中でモータの用途に合った特性の製品を選定しています。

今までは、ある意味若干オーバースペックで安全マージンの大きな磁石を贅沢に使えたわけですが、今後もしDyフリー磁石しか使えなくなる場合は、使用用途ごとにぎりぎりの線を狙った選定とモータ設計が必要になってきます。

下記は参考まで、弊社内でピックアップした磁石の耐熱評価試験の一部抜粋と、それによるモータ特性の比較グラフの一例です。

110℃~150℃の恒温槽で5時間加熱するという試験条件で、Dy含有磁石の場合は150℃加熱後も大きな特性の変化は見られません。しかしDyフリー磁石の場合は、110℃までは問題ありませんが、130℃、150℃と温度が上昇していくにつれ、不可逆的に磁力が低下し、そこから引き起こされる様々な特性の変化が見られます。(測定試験は磁石が常温に戻ってから実施しています。)
ですので、このグレードのDyフリー磁石を使用する場合はモータ温度が110℃以上に上がらないようなモータ設計と使用環境の確認が必要になります。

以上長文になりましたが、年頭から再燃したレアアース問題及びその背景の解説と、調達・技術 両面から弊社対応状況のご報告をさせていただきました。
7月のブログの結びと同様になりますが、明和製作所は高効率モータを開発するだけでなく、カスタム設計・一貫生産の強みを生かし、技術開発と資材調達、生産・製造技術が一体となって臨機応変に対応し、供給責任を全うできるモータ・メーカーを志しております。
お客様にご迷惑をおかけする事が無きよう、最善を尽くしてまいりますので、よろしくお願い申し上げます。

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