DCマグネットモータのバランス修正とバランス修正用パテの評価試験
お久しぶりですU.N.です。先月11/21は弊社の66回目の創立記念日でした。それでふと66年前(1959年)に起きた出来事を調べてみたところ「ソ連の無人探査機ルナ2号による世界初の人工物月面到達、ルナ3号による世界初の月裏側の撮影」という出来事に興味を引かれました。38万km彼方にある、見上げればそこにある月へと続く大きな一歩。現在はアルテミス計画によって長期滞在可能な拠点建設が目指されています。人類は母なる星を離れ新たなゆりかごでの生活を営むのか、それとも・・・。この先どのような未来が待っているのでしょうか。楽しみです。
話は戻りますが、創立記念行事の際は弊社のグラウンドにて、全従業員参加で「モルック」という競技を行いました。木の棒(モルック)を投げ、数字が書いてある木のピン(スキットル)を倒し、点数が50点ぴったりになるよう競うスポーツです。ルールの詳細は割愛しますが、最初は当てるだけで良かったのが、途中から点数の計算をしながら倒すピンや本数を決めそれを狙ったり、対抗チームが目的の点を取れないようにピンの位置を崩したりと、戦略的な競技であることがわかってきます。初めてモルックをやってみましたが面白い競技だなと思いました。

さて、今回はDCマグネットモータのバランス修正パテの評価試験というものを行いましたので、弊社でのロータバランス修正の様子と併せてご紹介したいと思います。
DCマグネットモータに関しましてはDCマグネットモータとは、バランスに関しましては静バランスと動バランスについてという過去記事がありますのでぜひご覧ください。
1.ロータの製造工程
まず、なぜバランス修正が必要なのかといいますと、モータの内部部品である回転子(ロータ)は高速で回転しており、R軸の旋盤加工での同心度のばらつきや寸法公差といった機械加工の精度、R軸の形状(キー溝、歯切り、偏心等)、コアや整流子といった購入品の精度、ロータ組立時の各部品を圧入した際に起きる部品のわずかな傾きや歪み、巻線時の銅線の偏り、ロータワニス処理時のワニスの偏り(ワニスはコイルにまんべんなく滴下されますが硬化前のワニスは流動体であるため重力によって偏りやすくなっています)といった様々な条件が重なりアンバランス状態になっていることが大半であるため、そのままの状態で使用すると振動の原因となるからです。
そのため、弊社ではモータの種類毎に適したバランス修正を行い振動の発生を抑えるようにしています。
ここでロータの製造工程をざっくりご説明しますと

となり、今回のお話であるバランス修正は巻線工程の最後に行っています。巻線工程はモータの巻線方法と工程についてもご覧ください。
2.バランス修正の種類
弊社では主に2種類のバランス修正を行っています
2-1. 増量法
増量法はアンバランスを修正する専用のパテを用いて行います。回転数が比較的低いマグネットモータ(~6,000r/min)に用いる方法です。
写真2-1-1、2-1-2のようにコイルに専用パテを重りとしてつけ、バランス修正を行います。

2-2. 増量・減量法
ロータが高速回転する整流子モータ(~30,000r/min)に用いる方法で、上記のパテでは遠心力に耐えられないため、写真2-2-1、2-2-2のようにバランスピースを鉄心(コア)に打ち込んだり、ファンやコアを強度に影響がない程度に削ってバランス修正を行います。

上記のうち、今回はバランス修正用のパテを用いて行う増量法をご紹介します。
3.増量法によるバランス修正作業
増量法によるバランス修正は以下のような作業を行っています。

このようにしてバランス修正を行っていますが、ここでの修正が甘いと先に述べたように振動の元になってしまい、モータの状態で試験を行った際に最悪モータが振動で動いてしまうため高い品質を保つ重要な工程になります。
4.バランス修正用パテの評価試験
弊社ではバランス修正の際にパテを用いていることは上述しましたが、2025年の夏に報道を騒がせたレアアース危機とほぼ同時期、中国商務部の輸出規制にパテの材料に含まれるレアメタルの一種が該当し通関が滞る事態が短期的に発生しました。
現在は解消されているものの、BCPの観点よりパテが入手難となった際に迅速なモータの生産継続を図るため、現在使用しているバランス修正用のパテとは別に代替品を選定し、そのパテが弊社の実使用に耐えうるかの評価試験を実施しました。(あえて条件を悪くするためかなり大きくパテを盛り付けたり高速回転、高温・低温環境にて試験を実施しています)
モータは弊社内でも多く使用されているサイズのPM-SS8、一番大きいサイズのPM-S10というマグネットモータを使用して試験を実施しています。

4-1. モータ最高回転数での密着性確認
定格電圧における無負荷回転数がそのモータの最高回転数となります。弊社マグネットモータで最も回転が速いものは5,500r/min程度で回転しているため、上記のPM-SS8とPM-S10の回転数が6,000r/minになるように回転数を調整し連続運転試験を行いました。
運転試験後、モータを分解しパテの硬化状態や損傷の有無、変色、コイルへの食いつきを確認し、良好であることを確認しました。

4-2. 恒温槽に回転子を入れ高温環境(180℃)で加熱しパテの状態を確認
弊社でのモータの耐熱クラスはE種、F種が基本となりますが、より上の区分であるH種(180℃)で加熱試験を行いました。
加熱後のパテの硬化状態や損傷の有無、変色、コイルへの食いつきを確認し、良好であることを確認しました。
※加熱の影響でコアが黄土色に変色しています。

4-3. 恒温槽に回転子を入れ低温環境(-30℃)で冷却しパテの状態を確認
-30℃環境での動作をご要望されることもございますので、-30℃での冷却試験を行いました。
冷却後のパテの硬化状態や損傷の有無、変色、コイルへの食いつきを確認し、良好であることを確認しました。
※-30℃から急に外気にさらしたためロータ表面が凍り付いています

4-4. 10,000r/minでの密着性確認
上記で弊社のマグネットモータの最高回転である6,000r/minで試験を行いましたが、さらに回転を上げ10,000r/minでモータの連続運転試験を行いました。
運転試験後、モータを分解しパテの硬化状態や損傷の有無、変色、コイルへの食いつきを確認し、良好であることを確認しました。

4-1~4-4のように選定したパテが問題がないか評価試験を実施し、現行品のパテと差異がなく実使用において問題がないことを確認しました。
※このバランス修正パテの試験は入手難となった際を想定した代替策を準備しておく目的で行ったものです。実際に変更する際には顧客企業に4M変更申請等を行った上で実施します。
バランス修正パテに限らず、製品や構成部品に変更がある際は変更前後でモータ特性に変化がないか、今回のような検証を必ず行います。しかし検証にはかなりの期間を要する場合があるため、もしもの時に迅速に対応して供給責任を果たせるように、常々全社各部門でリスクアセスメントを行い、必要に応じてこのようなBCP的な取組みを行っています。
完璧はあり得ませんが、安心して供給を任せていただけるよう日々努力しております。
本年度最後の技術者ブログ発行となりました。来年もよろしくお願い申し上げます。

